生意気

ネット関係に勤める僕が生意気にも好きなことを語る備忘録的ブログ。好きな言葉は「急がば回れ」

虚無と実感。岡崎京子『リバース・エッジ』

コンビニでふと、気になったので、購入してみました。

僕はこういった雰囲気の作品が好きで、浅野いにをさんやうめざわしゅんさんの似たような雰囲気をその作品に感じた。

 

コンビニに並ぶ漫画の羅列から、一際浮いているように見えて、ついついレジまで運んでしまった漫画です。

 

 

岡崎京子さんの『リバース・エッジ』という漫画。

 

あらすじ

 

岡崎京子さんといえば、2012年、沢尻エリカさん主演で公開された映画『ヘルタースケルター』の原作者で有名です。

そんな岡崎京子さんの最高傑作と謳われる作品がこの「リバース・エッジ」。

 

90年代初期がこの作品の舞台であろう。

バブル崩壊直後とあって、どこか飽和的な雰囲気を感じる。

 

主人公は”若草ハルナ”という女子高生。

母子家庭で、同年代の彼氏がいるも、その彼氏はいじめっ子でガキっぽいということで。ハルナはそんな彼氏を遠ざけるような態度をとっていた。

 

ハルナの彼氏である”観音崎”のいじめの対象が、”山田一郎”。

山田は美少年でありながらも、うちに秘めた同性愛者という性壁を隠しながらも、周りとのギャップから環境に馴染めないでいた。

 

ある日、観音崎からのいじめにより、衣類を全て剥がされて、放置されているところを、ハルナが助けに行ったことで、山田から「宝物」を見せてあげると言われる。

 

その夜、二人は待ち合わせをして、山田の「宝物」がある河川沿いの藪の中に足を踏み入れて行く。

しかしそこにあったのは、腐敗が進み骸骨化された「死体」だった。

 

ハルナはそんな山田の秘密を共有するようになり、物語はさらに深みに進んで行く。

 

 

死という希望

その死体を見て山田は「勇気が出る」とハルナに話す。

 

どいうことかよくわからないという風だが、どこか共感を得るようなその言葉に山田という人物に感情移入をせざるを得なくなった。

 

毎日習慣的にいじめに会い、生きていても辛い日々の山田は、絶対的な死を体現するその死体というものに、安心感を得ているような気がする。

 

生きながら死んでいる。死んだ魚のような目。

 

そんな表現を次節よく聞くが、まさにそんなような状態なのが今の山田だ。

 

心は死んでいるが、体は生きているような山田。

いじめにあっている時も、どこか無機質な感情を持たない風で、その行為を受けている。

何も感じない。何も思わない。

 

嫉妬と憎悪と

 

そんな風に振舞ってはいるが、山田には想い人がいる。

もちろんそれは同性で、圧倒的な片思いに過ぎない。

 

その想い人の男の子が、彼女と歩く姿を目にしたときは、激しく嫉妬していた。

 

山田にも、「ズル」と称し付き合う異性の子が存在する。

しかし、あまりに自分に関心を抱かない山田に不安を感じ、それといつも一緒にいるところを見るハルナに対しても嫉妬心を抱く。

 

最終的にはこの嫉妬が大変なことになるのだが。

 

人は感情があるから、嫉妬をするし、疎ましい気持ちも抱く。

 

この漫画では、そんな人の抱く負の感情がリアルに、そして生々しいほど描かれる。

 

その描写の仕方が逸材ゆえ、たくさんの人の潜在的な負の感情に共感でき、今日では最高傑作と言われているのかもしれない。

 

ここまで”行間を読む”を受け手に任せる作品も珍しくない。

 

 

映画化による賛否両論

この漫画が連載されていたのが1994年頃。

それから20年の時を経て、現代にいよいよ実写化されることが決定している。

 

主演は二階堂ふみ

 

大概、人気作が実写化されると批判の嵐になるが、この作品も例外ではない。

 

原作が素晴らしければ、必ずしも実写も素晴らしいとは限らないのだ。

 

僕は最近この作品に触れたばかりなので、正直どちらでもいい。

 

ただ一つ心して欲しいのが、この作品の魅力に打たれた人たちが作品を作っていること。そしてこの作品は受け手次第ではどうとでも変わるということ。

 

『リバース・エッジ』という漫画は、ほぼ間違いなく万人に当てはまる感情の描写をしている。だからこそ自分ごとに置き換えやすくなる。

 

世界は嫉妬の上で成り立っている。

 

僕の好きな漫画家”楠みちはる”さんの新作「特別のエゴイスト」で主人公がそう残している。

 

まさにその通りなんだと、この漫画を読んで腑に落ちた。

 

アディオス